マルチタスクへのあこがれ

わたしはいろんなものごとを同時にこなすことができない人で、

一つのことをはじめると、そればかりに集中してしまう。

先月まったく絵が描けない時期があって、

なにをしていたかというと ずっと編み物をしていた。

目を血走らせながら毛糸に埋もれて過ごすこと数日。

それが突然、前触れもなくぱちんとスイッチが切り替わって、

いまは制作ばかりしている。

あみあみ期に完成したのは娘のニットキャップと小さなドイリーだけ。

自分のレッグウォーマーは編みかけ(一足はできてる)のまま放置されている。

制作の息抜きに手芸ができたらいいのに。

どうしてもひとつだけに偏ってしまう。

 

そんな性質にもかかわらず、いまひそかに挑戦していることがある。

それは年末の大そうじを小分けにして 毎日計画的に進めるというもの。

例年大晦日は大そうじでへとへとになっているので、これはいいアイデアだと思った。

すごい人はエクセルで進行表を作って、チェックを入れていくらしい。

自分は表をつくっただけで満足してしまう可能性が高いので

自宅の北から南へなんとなく進めることにした。

一日だいだい30分。

そして本日は3日目。

投げ出さずにぜんぶ終わらせられたらよい新年をむかえられる。 はず。

理想と現実のあいだ

夜一人の時間はだいたいラジオを付けている。

なんとなく耳を傾けながら 残った家事と翌日の準備をする。

 

先日、不思議な名前の昆虫学者が出ていた。

へーと思い聞いていると、まじめなのにゆるくて面白い。

美大にいそうな感じというか、妙なシンパシーを感じた。

 

「バッタを倒しにアフリカへ」は大学を出てから現在まで、前野ウルド浩太郎さんという

ふしぎな名前の学者さんがなめてきた辛酸の日々がライトな文体で綴られている。

わたしは虫が苦手なので、バッタ愛のくだりはわからなかったけれど、なりたかった職業になれたものの、

シビアな現実の中で身動きがとれない焦燥感はとても良くわかると思った。

研究を邪魔してくる要素が不可避であること(バッタが発生しなかったとか)も本当しんどい。

それでも前野さんは勇気とユーモアを持って前へ進もうとする。

 

言い訳や選り好みをしながらタイミングをうかがっていると、あっという間に時間がすぎてしまう。

100パーセントの仕事なんてなかなかない。

それがわかっていても腰が重い自分には、この人のむしゃらさがまぶしく映った。

自分を飽きさせないように工夫する、いろんなところに種をまいておく、

ここ一番のときはとにかく集中する、そういうことの大切さをあらためて考えさせられる。

良い本です。おすすめ。

 

後日談 この本は2017年の新書大賞をとったそうです。すごい。